じぇねくそぼーど

所詮は落書き。

自己満有機化学① Turbo Grignards

こんばんは、じぇねくそです。

とりあえず退屈な時間を潰すためにブログに書くことをいくつか考えた末、日頃趣味として嗜めている有機化学のお話でも書くかなぁと思ったり。でも自分のようなヒヨッコが書いたら本物のガチプロさんにぶっ叩かれる未来が見えたので、あくまでも率直な感想程度をダラダラと書いていこうかなと思いました。

さて、今日の昼休みにテキトーにケムステでサーフィンしてたらこんなものを見つけました。

www.chem-station.com

 ほーん、「ターボグリニャール」ときたか...無駄にかっちょいい名前してやがるなぁ。

まず「グリニャール試薬」というのは有機化学においては大変重要な試薬でございます。それはもちろん「C-C結合を作れる」能力があるからです。もう100年以上にわたって有機合成では使われています。

主な反応とかを見ると

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Ketone, Ester, Epoxide Rxns.

他にもニトリルなどとも反応できます。

しかし、グリニャール試薬は強塩基であり、水とでさえ反応してしまう非常にデリケートな子です。なので、そのままでは試薬として使えないものもいくつかございます。例えば...

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そりゃあ無理よ

ご覧の通り、用いる試薬にもカルボニルが付いているので、試薬が自身と反応してしまうリスクがございます。

でもこのカルボニルが付いてる試薬を使うならば、そのカルボニル基を「保護」してやればいい話で、アセタールにしてカルボニル基を一旦保護すれば全然問題なく使えます。

問題はこういうやつ。

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に、ニトリル...?

ニトリルやエステルなどの、カルボニル基以外で反応できる官能基が付いている試薬は先ほどのアセタールのようにお手軽な保護方法がありません。

じゃあ使わずに諦めろと言ってもいいんだけど、こういうのが使えるようになったら超便利じゃん?

そこで登場するのが「Turbo Grignard試薬」です。端的に言うと、こいつを使うことで上記のような本来使えない試薬が使えるようになるのです。今まで通りの使い方でも
全然OKという点も大変魅力的です。

下の図を見てください。

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どうやら最初の化合物をグリニャール試薬にしたあとでPhCOClを反応させると、いつも通りのグリニャール試薬の反応が起きた模様です。驚くべきなのが、ニトリルが事故反応をせずに平然と無反応のままでいることです。

どうやら最初に加えたiPrMgCl・LiClが何かをしているようです。この化合物はTHF溶媒中にiPrCl, Mg, LiClを加えて反応させることで生成されます。iPrClをMgをTHFに加えるのは普通にiPrMgClの生成だっていうことは簡単に理解できるのですが、このLiClは個人的に見慣れない化合物なので、ちょっと気になりました。 

読むところによるとLiClを加えることでiPrMgClが活性化する模様です。ちょっと詳しく言うと、iPrMgCl-LiClという四員環が形成し、iPrがよりマイナスに帯電するんだとか。しかしそれも実験結果から予想したことなので、本当かどうかは定かではないです。あちこち調べまわって反応機構を探して見たんですが、まだ考案されてない模様。論文とかもチャレンジして読んでるんですが、僕のヒヨッコ頭では全然理解できてない模様。

でも面白いですね、こういうの。そんな感じ。

それじゃ。