じぇねくそぼーど

所詮は落書き。

漢検CBT 2級受けてきた

どうもです。まあ, なんとなくやりたかったので漢検を13-4年ぶりくらいに受けてみました。最後に受けたのが小学生の時に7級かなんか受けた時で, その時は半ば強制的に受けさせられたのを憶えています。

最近はCBTで時期を問わず漢検を受検できるので, 便利な世の中になったもんだと思います(ただし2級まで, 準1級以上はペーパーテストしかない)。勉強を始めたのは2週間前くらいで, 主に漢検公式の過去問とかを使って勉強してました。

すでに受験された方の体験談のブログ記事とか読んだので, どんな感じかはある程度知っていましたが, 意外と書取り用のタブレットの画面が小さく, また漢字を大きく書いたつもりでも回答欄に反映された文字が割と小さかったので, 何回か書き直すのに時間がかかりました()

体感はまぁ, 過去問とそんなに変わらない感じでした。強いて言えば, 四字熟語が簡単で安堵した感じ。勉強を始めた頃は四字熟語の部分でほとんど全滅で, 新しい問題を解く度に知らない熟語が出てきて直前は相当焦りました。マジで怖かった。

今回は多分大丈夫なはず。次はドイツ語か, そのまま準1級受けるかで迷ってます。ゆくゆくは1級まで行きたいね。

それではまた。

あの時よりは心が整理されたから, ちょっと一言

ブログの記事を見てたら, 3年前にこんなものを書いてたらしい。

asdfgenex.hatenablog.com

センター試験直前期なので, 馬鹿みたいに漢文用語が混ざっているのが微笑ましい。昔の俺は漢文学者を気取っていたもんで, 隙あらば漢文で学んだ言葉を使いたくなっていたもんだ。

それはさておき。色々変わりました。もう昔ほどの漢文キチガイでもないし。

 

結局, 墓には行った。

去年初めて行ったけど, これ以上ない虚無感に襲われて多分20分くらい棒立ちしてたことは覚えてる。その後墓の前に座って延々と喋り始めたと思う。2時間くらい。ずっと喋ってなかったもんだから, ついつい世間話とかしたくなってしまった。何も返ってこないことなんてどうでもよくて, 目の前でうんうん, 続けて続けて!って言わんとする彼女の顔を想起しながら最近の出来事とか, 化学の話とか, 物理の話とか, 哲学の話とか, 音楽の話とか。

そこから帰りたくなかった。帰るということは, 自分が直面しているカスみたいな現実への回帰を意味した。コロナだの, 大学だの, 人だの。静かな霊園の外には, 忌避したくて仕方のないもので溢れていた。どうせ, 帰ったところで虚無を紛らわすためにCS:GOを起動するだけじゃないか。それか, また楽しくもない大学の勉強か。また生活習慣のことガタガタ言われるんだろうなあ。自分の力不足で選ばざるを得なかった未来へのロードを辿るしかないんだろうなぁ。そういう考えが過ぎると, 去り際にまた墓に振り返って, 「ゴメン姉貴, もうちょっとだけ付き合って!」ってお願いしてまた地べたに座り込んだ。

 

思えば, 1人の人間が人生に与える影響って, とてつもなく大きいんだなあ。俺は彼女と過ごしてた2013年-2017年の時期が今でも自分の人生のいわゆる黄金期だと感じている。今の自分の学問に対する姿勢は, 彼女から得たものだ。中学生の俺に自然科学や哲学, 文化などの知識を授け, 何が大事か, 何を見るべきかを教えてくれた。勉強が今まではテストのため, 塾のためだったのが, 彼女とのやり取りで一気に変化した。もっと考えるようになったし, 細かなディテールに着目するようになった。

今思い返せば, 彼女は完璧な人間ではなかった。一緒にいた時はどんな時も頼れるし, なんでも知ってるし, 彼女に勝る人間など存在するわけがないと思っていたけども, そんなことは全然ない。どちらかと言えば「自分が正しい」と思うタイプの人間だったので嫌われることもあったし, 気に入った人間以外に理解されようっていう気がおそらく最後までなかった。そう思えば, 俺と彼女が仲良くなれたのも偶々でしかない。

彼女がいなくなって, 高校にいた頃はまだ正気を辛うじて保てたけど, 受験期を経て大学に入って徐々にそれで心がすり減らされた。辛い時があったらいつも, 「姉貴がいさえすればなぁ」って思い始めてしまう。知らぬうちに自分の生きる理由を彼女に依存していたのかなあと不安になる。

 

時が経てばこういうのは癒えると言うけども, もう5年経った。彼女の歳に追いついてしまった。

なーにしてんだろうなあ, おれ。

いろいろちかれたという呪詛

お久しぶりです。

そろそろ新学期が始まります。今学期はもっと有意義に過ごせたらなぁと思ってますが, 色々振るわないのも事実です。うんち。

何かと言語化しようとして, 今までできなかったものを殴り書きたいという衝動に駆られてこれを書きました。

 

 

思えば去年3月からの進歩があまりなかった気がする。

コロナでラボに行けなくなって, ひたすら虚無に浸かっていた4-7月, ほんのちょっぴりだけ本気出した9-12月, そして何故かまた意気消沈した1-2月。どうしてあんなにモチベが死んでたのか色々考えたけども, 納得のいく答えが未だない。単純に怠惰だったのと, 環境がまるでカスだったことが重なったのか?ということくらいしか思いつかない。 

ただ確かなのが, 言語化することすら困難な退廃的でオワオワリな思想が脳味噌にこびりついたということだ。

試験のとき, 全然やる気が出なかった。試験の結果なんて, 科目に興味ないから捨てるか, 興味あったから完璧に破壊するという両極端なパターンしかなかった。恐ろしいのが当時, 試験を「捨てる」ことに全くもって抵抗がなくて, どうせ興味ないことを得意にしたところで意味がないと思ってた。テスト勉強の時間より多分アトキンズとかウォーレンとかヴォート/レーニンジャーとか, redditで流れてきた論文とかを読んでた時間の方が5倍くらい長かった。ボーッと何か化学書数学書を読んで, その知識を何となく取り入れて考えるみたいな感じ。解剖や微生物の知識がないことよりも, 微積写像がよくわからないとか, 春化がなんたるかとか, SREBPの仕組みの解明とかの方が自分にとってよっぽど重要だった。

1年生の時は前期にちょぴっと物理のテストで死んだこと以外は全て納得のいく結果になってた。そこからの落ちぶれ度が計り知れない。うっかり落とし穴に落ちたというレベルじゃない。意気揚々と崖から飛び降りた感じだ。

同時に家庭関係も割と雲行きが怪しくなって, 微塵もモチベがなかった勉強が捗ってないことも積もって, 益々現実逃避が酷くなりゲームに逃げた。ここら辺のド真ん中で書いたのがこれ。

https://asdfgenex.hatenablog.com/entry/2020/05/13/140305

 

そんなことを繰り返してたら, だいたい考えてることが化学の話か, CSGOの話か, LoLの話か, みたいに思考のレパートリーが片手で数えられるくらいに激減した。それでいいと思っていたけど, 段々周りとノリが噛み合わなくなって, ライフスタイルについても将来のこともキツめに言われ始めた。割と真面目に人生どうでも飯田橋みたいな感じで思ってたので, 将来がどうなろうと知ったことではなかった。どうせ臨床には行かん, あれもこれもどうせ価値のない無駄な足掻き, そういう観念で動いていたので, 本気で人の話を聞いてる時はおそらくここ半年間で一度もなかったと思う。

そうすると, 自然に人間関係にも疲れを覚え始めた。話が合わなくなってきたと思った。自分が「なんか合わないな」という固定観念に動かされているのか、それとも本当に噛み合わなくなったのかどうか?何故かはわからない。

まともに会話することも減って, そのうち会話することすら煩わしくなった。喋る理由が見出せなくなった。会話していて抵抗がなかったのは高校の友達とか, 付き合いが長いFFとか, ラボの先生方とか。それ以外の人間に対しては本当に喋ることすら拒絶しつつあった。家でも, 家族は訳のわからない話題で争ってばかり。いよいよ家すら安息の場でなくなりつつあった。

そういえば, 大多数の他人からどう思われるかも考えることがなくなった。自分が良く思われて欲しい, 何があっても関わりを大事にしたいという人々からの認識だけにフォーカスすることにした。その人たちとは真摯に付き合って, その他はまぁいいや, と思って会話どころか, 出会うことすら避け始めた、

喋ることへの拒絶は次に「繋がり」そのものを持つことに対する拒絶になって, そこで半ば衝動的にLineも消してinstagramもアンストした。所謂「人間関係リセット症候群」に近いものかもしれない。一番快適な環境を作るためには, 好きじゃないものを片っ端排除するしかないと思っての行動だった。どうせ4月になれば, 殻に篭っていられないだろうけど, 知るかよ, バーカ。周りは気にもかけないと思えば, 驚くことにLineを何故消したのかどうか問い質す内容の連絡が思った以上に多かった。非現実的な願望だが, できれば4月から存在を忘れて欲しいし, 何なら3年次編入で入った新入生とでも思ってもらえれば個人的に気が楽だ。

 

 

これが正気の沙汰ではないことを思い始めて, どうにかしなきゃ, やべえ終わる, とか最近になってようやく感じ始めた。でもそこで何故か思い止まるのである。別に自滅してもいいんじゃね?と。理由はよくわからない。積み重ねてきた「無駄」な知識が惜しいの?築いたつもりのpseudo-closed communityが惜しいから?それとも他に何かあるのか。

でも, 何か取り返しのつかない, 恐ろしい病にかかったという感覚だけは付き纏う。生きることが厭になったとか, 死にたいとかそういう話ではなくて, 静かに快くフェードアウトしたいのに近い。外から見ればバカなだけ。

アミンの合成法まとめ(mainのやつ)

久々の有機化学系の話題になります。

「アミンの作り方」をとりあえず羅列してみただけです。

 0. ダメな例

例えば1-クロロプロパンから1-アミノプロパンを合成したいとしましょう。


パッと思いつくのが「NH3と1-クロロプロパンをSN2的に反応させればいいのでは?」というものです。

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NH3は絶対過剰にあるからイオンと反応して目的の生成物が出てくるので、一件落着!の、ようにも見えます。これ、ダメです。
実は1-アミノプロパンはNH2基の隣に電子供与基のアルキル基があるので、アンモニアより求核性が大きいです。なので生成物の1-アミノプロパンはまだ残っているであろう1-クロロプロパンと反応し始めます。

ここで生じたジプロピルアミンに関しても同様の理由で更に求核性が強いので、もっとめちゃくちゃになります。(その後の酸・塩基平衡で中性アミンが生じるところは省略しました)こんなん、分離する気にもなりません。

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あー、むり。

(注: 第3級を超えて第4級アンモニウム塩が生じることもあります。第4級アンモニウム塩はそれで有用な反応があったりするので、ご参考までにチェックしてみてください。)

www.chem-station.com

まあ、こんな感じでとんでもないことになるので、単なるSN2だと無理そうです。なので他の方法を模索してみます。

 

1. アジドの還元

アジドというのは以下のような官能基です。

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一般的にはアジ化ナトリウム(NaN3)やアジ化カリウム(KN3)などの形で用いられることがほとんどです。室温では白い粉末で、とりあえずは安定ですが加熱すると爆発します。人体にはかなり有害で、Cytochrome c oxidaseを阻害してくるのでATP合成がお亡くなりになります。

アジ化物を作るのは簡単です。適当にSN2反応を起こすと容易に反応してくれます。こんな小さい分子に2つも負電荷があるので求核剤としてもバッチリです。

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このアジ化物を還元させるとアミンになります。還元する方法はとりあえず何でもいいです。LiAlH4でもよし、Pd/Cでもよし、Raney-Niでもよし。PPh3を用いる方法は特にStaudinger反応とも呼びます。どれを使うかは化合物次第ですが、これらの方法を吟味するのは本当の有機合成のシチュあたりなのかな〜と思ったりします。固相・液相中の反応であるかとか、生成物が水溶性かどうかも合わせて考えて選ぶところだと思います。

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2. Gabriel合成

19世紀のドイツの化学者のS. Gabrielという方が考案した第1級アミンの合成法です。

フタルイミドというものがあって、構造は以下に示す通りです。常温では固体の化合物でございます。

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このフタルイミドの特徴はアミノ基の隣にカルボニル基が二つもあることです。カルボニルは電子吸引基なので、仮にフタルイミドを脱プロトンして塩基/求核試薬として用いたとしても、(0)の例のように過剰なアミノ化反応を起こさないという利点があります。

この点に着目して、SN2的な反応をやってみると以下のようになります。

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まず、アミノ基を強塩基で脱プロトンさせた後に、ハロゲン化アルキルとSN2反応させると以上のようになります。

この後、何らかの方法でカルボニルを攻撃して五員環を開裂させて最終的に目的物のアミンを取り出します。教科書にはここでヒドラジンNH2NH2を用いると書いてあることが多いですが、ヒドラジンは結構危ない化合物なので普通に酸や塩基を加えて開裂させる方法もあります。

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(1) ヒドラジンの場合の反応機構

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(2)塩基を用いた場合の反応機構

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このGabriel合成は第1級アミンの合成法としては優れているのですが、第2級や第3級アミンは作れません。なので、「色々なアミンを作るための汎用的な手法」が欲しいところです。

あるんですね〜、これが。

 

3.  還元的アミノ化 (Reductive Amination)

もっとも安定していて広く用いられる方法が「還元的アミノ化」という方法です。

要は「アミン(NH3含む)とアルデヒド・ケトンを反応させて新たなアミンを作る」という話です。

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(酸性条件下(pH4~5)で、1当量のカルボニル+1当量のアミン+NaBH3CN→生成物+1当量BH2CN+1 H2O)

いずれも辿るステップは同じです。

1. イミン/エナミンの生成

2. イミン/エナミンの還元

カルボニル化合物とアミンを反応させるとイミンを生じますが、イミンは還元剤の作用でアミンになります。この手法は非常に多くのバリエーションのアミンを作るのに使えるのでかなり便利です(例外アリ)。

還元剤として用いられることが多いのはシアノホウ素化水素ナトリウム NaBH3CNです。ニトリル基があるので、水素原子にある負電荷がちょっとだけ弱くなり、結果としてNaBH4よりも還元力が弱くなります(もとよりEN H > B)。なので、反応物のカルボニルを還元することなく、イミンだけを還元できるようになっています。

反応機構は以下のようになります。ほとんどイミンの反応と一緒なのであっちの方を覚えていれば難しくありません。

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分子内にアミノ基とカルボニル基を持つ化合物でも、もちろん使えます。環状アミンがきれいに出来上がります。

アミンの合成においてはほとんど万能な還元的アミノ化ですが、痛い例外が一つだけあります。アミノ基とsp2炭素原子間の結合は作れません。

ex. 下の化合物を作るとき、ベンズアルデヒドエタノールアミンからは合成できない。

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なので、sp2炭素とアミンの窒素を繋げるためには別のアプローチを考える必要があります。上記の化合物ならばアニリンアセトアルデヒドからスタートして還元的アミノ化を用いるとか、もしくはカップリング反応などを駆使するなどして工夫する必要があります。

(参考: C-N結合を作れる良い例)

www.chem-station.com

 

gdgdしてきたのでこの辺で区切ります。

それでは。

 

 

個人的に使ってる教科書・問題集まとめ

当方が化学・生物学を勉強する際に使ってた教科書を適当に紹介しようかと思いまスゥゥゥ... 

(注: 当方は基本的に原著で読んでいますが、原著と邦訳版ではそんなに差はないと思います)

1. 有機化学

  • ウォーレン有機化学

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    有機化学といえば王道の教科書がコイツな感じがします。まず反応機構に関する記述が半端なく詳しいです。たぶん学部レベルの有機化学よりも広範囲をカバーしてて、尚且つ反応機構に対する理由などが丁寧に解説されていて非常にわかりやすいです。個人的な評価ポイントはフロンティア軌道論の丁寧さと、(学部レベルでは)マイナーな元素(S, P, Si, etc.)+比較的新しい反応(光延反応など)のの詳細な説明あたりかなと。
    有機化学をガッツリやりたい人、そっち系の大学院に進学したい人にバッチリの一冊だと思います。薬学系とかの暗記中心の有機化学を勉強したい人にはオーバーワークな気がします()
    練習問題の量は多すぎず少なすぎず、という感じ。どれも手応えのある問題なのでとても役に立つと思います。

  • 有機化学演習 -基本から大学院入試まで-

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    たぶん学部レベルの有機化学の問題集だとコイツが王道なんじゃないかなぁと思ったりします。基本問題から難しい問題まで網羅していて, とても進めやすい感じです。(小学生並みの感想)(ぶっちゃけあまりやり込んでないとか言えない)

  • 大学院を目指す人のための有機化学演習

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    数ヶ月前にどこかのYouTube動画で見つけて、即購入した一冊でございます。問題数的にはそんなに多いって訳でもないですが、守備範囲が結構広いです。評価ポイントはマニアックな反応(教科書に載ってないような反応)を扱っているという点だと思います。時たま見る訳のわからないReagentとかの知識はここで得ることができたと思っています。

2. 細胞・分子生物学

  • Essential細胞生物学

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The 王道中の王道ですね。1年生の前期からずっとお世話になっています。分子生物学をこれから始める!って方にも、基本にまた立ち戻りたい!って方にもオススメの一冊です。だいたい必要な基本事項はここに全部書いてあります。これをマスターすれば恐らく学部レベルの分子生物学は8~9割方マスターしたも同然です。

  • Molecular Biology of the Cell

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王道中の王道中の王道です。Essentialの親版。通読するための読み物というよりは、細胞生物学の中の一つの現象をもっと掘り下げて調べたい!って時に使う辞書的な使い方がメジャーかなと思います。

個人的には「生物学的な目線での説明」をこっちで調べて、「タンパクの構造+化学的な目線での説明」を後述のヴォートとかで調べるという使い方をしています。

3. 生化学

  • ヴォート基礎生化学

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1年の後期に生化学という学問に興味を持って、はじめて触れた教科書です。一言で表すとディテールが半端ないです。タンパクの構造とか反応機構の解説がヤバい、ヤバい(語彙力)。

生化学の各トピックにおいて特に化学的(有機化学+物理化学)な側面にフォーカスした、丁寧な解説が特徴だと思います。読み物としても使えるし、辞書としても使える良書だと考えております。ただ「これから生化学を始める!」という人には結構難しい本じゃないかなあと思います。(化学の知識や概念の理解は絶対必要, あとは基本的な生物学の理解もあると読みやすいと思います)

ちなみに章末問題のクオリティは全体的に高めです(後述のリッピンコットより難しい問題もある)。が、そこそこの頻度でクソなぞなぞbotみたいな問題が載ってるのでそこはご注意。

  • リッピンコット イラストレイテッド生化学 

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アメリカの医師免許試験(USMLE)対策用の教科書ですが、試験対策だけでなく普通に生化学を学習するのにも非常に役に立つ一冊だと思います。まず図が非常にわかりやすい。無駄を一切省いて、コンセプトで何が一番重要かをハイライトした解説も充実しております。医療系学生向けにも臨床的に重要な事柄も丁寧に説明していて、尚且つ基本事項もハイライトしています。

あと章末問題のクオリティが圧倒的に高い。どれも臨床系の問題に見えますが、基本的なコンセプトをちゃんと理解していないと解けない問題がほとんどです。ただの暗記を理解へと昇華させて、本当の生化学力をつけるには最高の教科書だと思います。

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Essentialの章末問題とかを除くと、分子生物学の問題集って結構出回ってないので恐らくバイオ系の大学院を考えてる方でこれを使っている人は多いのかなと思います。分子生物学と生化学の広い範囲にわたった問題が収録されています。おまけ程度に英語の問題もあったりします。

問題のレベル的にも結構範囲が広く、基本問題から難しめの知識を聞いてくる問題まで載っています。これをやってみれば間違いなく生化学に対する理解が定着してくるのではないかと思います。生化学を習いたてだとちょっと苦労する問題が多いと思うので、一通り勉強した後にこれを解き始めると使いやすくなると思います。

 

4. 薬理学

  • Katzung and Trevor's Pharmacology Examination and Board Review

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「これから薬理学をはじめる!」という人にオススメしたい本です。ほどよい情報量で、大事なお薬が全部載ってます。知らなければいけない作用機序の解説も充実しています。ショボいページがマジで一つもない

かなり完成された薬理学のテキストだと思います。

 

  • Basic and Clinical Pharmacology

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前述のBoard Reviewの親本。つまり薬理学のCellって感じ。

個人的な評価ポイントとしては総論(薬物動態etc)と作用機序の記述が非常に丁寧なことです。ただ、説明が非常に周りくどい部分もそこそこ多いのでマジで混乱することもあります。医療系で要求されるスピーディな薬の暗記とかにはマジのマジで不向きだと思います。Board Reviewの情報が物足りないと思ったらこれで保管するのがベスト。


なお、全部個人の感想なので参考になるかどうかは知らん(投げやり)

 

 

 

 

モチベがねェ

受験期には絶対に戻りたくないと思っているけども、当時のしんどい毎日を耐えるためのモチベーションは慥かにあった。「大学に入って本物の学問をする」というモチベーションがあったはずだ。果たして本物の学問が何かは大学に入った今、よくわからなくなったけど、昔の俺は「受験勉強のような同じことの繰り返しじゃなくて、新しいことを学んで自分で考えていく」という漠然としたイメージを持っていた。

而してそういう「新しい学び」を求めて勉強の合間に塾の近くの書店で大学の有機化学と物理化学の教科書や、「孫子」「大学・中庸」など漢籍や文学を探しては立ち読みしていた。目指していた学部は理学部でも文学部でもなかったけど、とにかく「つまらない受験勉強」から逃れたかった。そうして得た知識は膨大とまではいかなくても、ある程度のレベルまで蓄積されたと思う。

格通知が来た時はこの上ない悦びを感じた。やっとつまらない勉強が終わる、前に進めると思ったものだ。しかし大学に来て授業を受けてみると、自分が期待していた「新しい学び」はさほど感じられなかった。でも後期で「生化学」という学問に出会ってその面白さに気づくと、こういうのを探していたんだと思い、とことんやり込んだ。やり込めばやり込むほど面白くなって、大学のバイオケミストリーのラボにも入ることができた。

それに対して今の自分を見てみると、どうもあの頃のような強い願望が著しく欠如している気がする。もちろん、化学とかはまだ好きだし、以前はできなかった趣味の楽器演奏だっていくらでもできる。それでも、日頃やるべきことに対するやる気が削られているのを感じる。

大学の授業も暗記事項を投げつけるばかりだし、同級生と通話しても毎回授業の話ばかりで、他の話をしても理解してもらえないので結局つまらないな〜と思ってゲームをする。自粛生活のせいか?と思えば、1年生の時だって暗記事項ホイホイな授業を受けた後に友達と飯食って帰って必死に覚えるだけの毎日だったので、実際のところ「同じような日々」という点で似ている。

 

そうして1ヶ月ちょい前に気づいた。「なんだ、結局受験の時と変わんねーじゃん。」

 

そして時たま別の大学の知り合いと喋ったりすると、いかに自分がつまらない環境にいるかが一層際立つ。たとえば某大学化学科の一人は自分の興味ある分野の研究を始めることができそうでワクワクしていると俺に言ってたし、他の人達だって自分の好きな勉強ができていて楽しそうだ。好きなことを糧に生きると決めていて楽しそうだ。隣の芝生が青く見えるだけかもしれない。本当は辛いところだってあるに違いない。でも、そうやってる人を見てる傍で、自分は無味乾燥な勉強を強いられていて進もうにも進めないって感じてしまう。なーんで俺はあいつらみたいに好きなことがとことんできないんだ?って不平を言いたくなる。

ま、こんな文句並べたところで「他人と比べてどうすんのさ」「甘えだろ」「贅沢な悩みだ」とか言われるに決まってるけど。一番イラッとくるのは「みんなも辛い」って言われることで、みんな辛ければ俺も辛くあるべきというのが道理なわけねぇだろと叫びたくなる。

だからもう「しらね!W」と思って好きな勉強ばっかりやってたほうがよっぽど気持ちいいだろうなと思うけど、成績を落とすわけにもいかないし、どうにかしてうまくやりくりしてかなきゃいけないと思ってる自分がいる。思うだけなら簡単だけどね。

 

まったりらくがき「GPCRのあれこれ①」

生化学と分子生物学の勉強をしていく中で必ずぶち当たる壁が「シグナル伝達」で、その柱の一つを司るのが7回膜貫通型受容体のGPCRでございます。おなじみ「アデニル酸シクラーゼ」とか「IP3」とか「PKC」とかいう単語が出てくるパートです。

まぁ、なんていうか自分が生化学にハマり出したきっかけがここら辺のメカニズムを有機化学の観点から見てみよう!などという無謀な挑戦に乗り出したからなんですが...

その頃から色々調べていって今までなんとなくわかったことをメモろうかなと思いました。書くネタもあんまり浮かばなくなってきたし...

GPCRの基本構造

普通の人がGPCRについて知っておけばいいことは「細胞膜を7回貫通する」ということくらいです。N末端が細胞外にあって、ちょびちょびグリコシル化されてて、7回貫通して、C末端が細胞内にあって終わり!みたいな。

例えばウシのロドプシンの構造を見てみるとこんな感じになります。

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Bovine rhodopsin 2-D structure (Santillo et al. 2006)

膜貫通部分を見てみると疎水性アミノ酸が多いことに気付きます。ちょい考えてみるとわかるんですが、膜貫通型タンパク質の合成におけるstart, stopシグナル配列はだいたい疎水性アミノ酸なので見当つくかなぁと。

GPCRってのは何万もの種類があって、ほとんど全ての構造はいまだ解明されてないですが、だいたい基本構造は上のような感じやろなぁというのはわかってます。

ただ基本構造がおおむね一緒だってことはわかってても、GPCRのリガンドってたくさんありますね。GABAだとかAChだとかカルシウムとか。そのリガンドはどうやってGPCRに結合するか?これがまた色々あるんですね。

リガンド様式による分類

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GPCR types

昔の人たちが頑張ってくれたおかげでヒトゲノムが解明され、それまで曖昧だったGPCRの種類が分類できるようになりました。上図にも示したように、GPCRには5つの種類が今のところ確認されていまして、それらをまとめると:

  • Family A 「ロドプシンファミリー」:GPCRの中で一番研究されてたのがロドプシンで、たまたまロドプシンに構造が似てたGPCRが多かったのでこのファミリーができました。(ex) ロドプシン、エイコサノイド受容体、ACh受容体
  • Family B「ペプチドホルモンファミリー」(別名:セクレチンファミリー):名前の通り、ペプチドホルモンをリガンドとするGPCR群です。多分一番数が多いのがここ。(ex)セクレチン受容体、グルカゴン受容体
  • Family C「GABA受容体ファミリー(仮名)」:構造的な特徴としてはN末端部分にクチバシに似てる構造(例えが下手すぎて申し訳ない)があります。神経伝達物質代謝調節型受容体はこいつらでございます。(ex)カルシウムイオンセンサー受容体(CaSR)、GABA-B、mGlu受容体
  • Family D「Frizzledファミリー」:名前の由来を探しまくったんですがわからずじまいです。もともとはショウジョウバエで発見されたものです。これはリガンドがWntファミリーであることがわかっています。Wntといえば、細胞分裂とか増殖とかそこらへんに関係してくるやつですね。Wntカスケードもまた面白いんですが今回は割愛。
  • Family E 「接着受容体ファミリー」:もともとFamily Bだと思われていたものが色々調べていくうちに新たに分類されたのがこいつらです。実はこいつらの構造についてはN末端の配列が細胞膜表面の接着分子(カドヘリンとか)のモチーフに似てるってこと以外はそんなにわかってないらしいです。

Family B・D・Eはそこまで調べられてないのもあって今回はあまり言及できないのですが、Family AとCについてとりあえずちょびちょび喋ってみます。

Family Aのリガンド様式

Family A GPCRの共通点Family Aの主人公のロドプシンくんを見てみましょう。

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図(B)~(C)でレチナールの結合様式、図(D)~(E)で異性化によるGPCRのヘリックス構造変化がGタンパク質の結合部位を作っていくところが描かれる

ロドプシンのリガンドとなるのは11-cisレチナールという化合物なのですが、こいつは受容体の疎水性部分の奥深くに埋め込まれていて、Lys296のεアミノ基とイミン(Schiff塩基)を作って結合してます。この時に光が作用するとcis-レチナールはall-transレチナールに異性化するので、これに伴ってGPCRのヘリックスの立体構造が変わります。具体的にはヘリックスがズレてGタンパク質が結合できるような間隙(?)を作ります。これによってシグナル伝達がキックオフするわけです。

例をもう一つ。今度はアドレナリンβ1受容体です。気管支平滑筋拡張とかするアレです。

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ちょびちょび水素結合

アドレナリンもこうして疎水性コアの中に埋め込まれる形で受容体に結合しますが、この際にカテコール核(Ph+o-位の関係にある2つのOH)はSer204, Ser207と水素結合していて、2級アミンとAsp113もまた同様に相互作用しております。イメージとしてはヘリックス同士を繋ぐ「橋」の役割をアドレナリンが担う形です。こういう架橋構造を作ると、ヘリックス同士の相対的な向きがズレてGタンパク質が結合するという感じです。

Family A同士でも立体構造のズレ方に違いがあるの、なんか面白いですね(小並感)

Family Cについて

Family Cの特徴的な構造はN末端側のクチバシ型(教科書とかではローブ状、論文ではVenus Flytrapとも表現されてたりする)の構造です。このローブ状の結合部位にCa2+とか神経伝達物質(GABA, Glu)などが結合すると、構造変化を起こしてシグナル伝達へとつなげます。

確認されているFamily C GPCRはほぼ全部ダイマーで、ローブ同士はCysのジスルフィド結合で繋がれています。ここでは代表的なGABA-Bを見てみましょう。

下がGABA-Bの構造です。

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GABA-B Receptor.

 ローブは両方ともリガンド結合部位というわけではなく、片方だけにGABAの結合部位があります。じゃあローブは二つもいらなくねぇか?と思うかもしれませんが、実はこのGABA-Bが合成される時にC末端に小胞体保留シグナル配列がついてしまっていて、そのままだと細胞膜まで輸送できないのです。そこでC末端にもう一つのサブユニットが絡みつくと、このシグナルが覆い隠されて細胞膜まで輸送できるようになるのです。

しかもこのもう一つのサブユニットの方がGタンパク質と共役するので、こいつらはペアで働かなきゃいけない受容体なのです。

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なんだか書いててgdgdになりそうなので今日はここら辺に止めておきますが、GPCR、とても深いです。

 おまけ)トロンビン受容体

トロンビンはフィブリノーゲンをフィブリンに変化させて止血に関わる重要なSerプロテアーゼなんですが、トロンビン受容体も実はGPCRでなかなかに面白い動きをします。

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トロンビンはArg-Serの間を切断するかなり特異性の高いSerプロテアーゼですが、受容体のN末端をこの箇所でトロンビンが切断すると、切断された部位がそのまま折れ曲がってリガンドとして機能します。なんとも不思議ですね〜(棒)切断されて離れたペプチドもアゴニストとして機能したりします(どのようにするかは知らない)。このような「プロテアーゼの特異的な切断によって活性化されるGPCR」を「プロテアーゼ活性化受容体(protease-activated receptor, PAR)と言います。なので例えばトリプシンとかAChエステラーゼとかにもこういう受容体があるということかな。まだ見たことないけど。

トロンビン受容体がこのようにして活性化するとPGI2産生・TXA2産生などいろんなことが起きますが、やはりメインは止血のメカニズムに直結するところです。止血の全体像もまた面白そうなので後日書こうかなぁと思ってたり。

それじゃまた。